【ひとり旅1】北陸の大都会!金沢をいく〜2019春〜(その1:回転寿司編)
今回のひとり旅、行き先は金沢だ。
金沢は不思議な街だ。北陸に似つかわしくない華やかさと自己主張がある。
私は静岡県の浜松に住んでいるのだが、その中途半端な位置関係と地味さ加減から北陸には少しだけシンパシーを感じる。しかし金沢は別格だ。なんというか、街全体が「金沢」であることに自信を持っている気がする。
これが行き過ぎるとよそ者には嫌悪感が出てしまうが、金沢はそのバランスがちょうどいい。
出発は3月下旬の1泊2日。勤務の都合のおかげで平日休みを取ることができた。
浜松を9:55発のこだまに乗って出発。
青春18きっぷのシーズンだが、硬い座席でしんどい思いをして4時間も5時間も揺られ続けるだけの情熱はすでにない。ああいうのは学生や鉄道好きの方がやればよい。
ただ、列車に乗るという行為は好きだ。合法的にぼーっとする権利を与えられている気がする。
自我を失うほどにぼーっとしても、列車に乗っている限りは「移動」という目的は存在し続ける。人間を捨て貨物に成り果てる快感がそこにはある。
まぁそんな話はどうでもいい。
新幹線でお決まりの東海道お茶じまんを片手にゆられていると(もちろんほとんど揺れない)、あっという間に米原だ。途中名古屋を通過するわけだが、こういう大きな駅を降りずに通過するとなんとなく安心する。たぶん都会嫌いだからかな。
米原駅で特急しらさぎに連絡するが、40分ほど待ち時間がある。しらさぎでの飲み物を買おうと構内を見渡すが、売店が見当たらない。
仕方がないので一旦駅を出ると、お手本のような真円のロータリーの向こうに
有名な「とび出してくる彼」がいた。
今さら取り上げることでもないのだが、憎らしい少年の心に潜む闇を感じずにはいられない。その顔面に浮かぶ真っ黒な瞳は深淵へと続く洞穴のようだ。思いがけず事故防止のマスコットに君臨し、量産され続ける彼は今日もドライバーの胸に虚無を訴え続けるのである。
とび出す彼のすぐ横に平和堂があった。滋賀といえば平和堂、平和堂といえば滋賀、地域に根づくショッピングセンターである。
滋賀の2大名物を新幹線の駅近1分に配置するとはなかなかあなどれない町だ。
平和堂でビールとハイボール、ミックスナッツを買って駅へ戻る。
まだ電車の時間まで20分ほどあったのでホームの椅子に座って待つことにした。
こう書くとそこで何かあったかのように思われるかもしれないが何もない。
というかこの旅通して「何もない」。でも、こういう時間がひとり旅では大事なのだと思う。
強いて書くなら、よくよく見ると隣のホームにしっかりとセブンイレブンの売店が鎮座していたことか。見なかったことにしよう。
少し待つと特急しらさぎが入ってきたので自由席の一番後ろの号車に乗り込む。
このあたりを走る特急は前後2席で大きな一つの窓がはめ込まれている。個人的に、窓の後ろ側に位置する席に座りたい。前側の席だと車で言うピラーが視界に入り込んで迫力が半減だ。
日頃の行いが悪いせいか、指定席で買うと何故かいつも前側になるのでできれば自由席で乗りたいところ。「指定席」は「不自由席」というやつだ。
しっかりと窓の後ろ側の席を確保すると、後続の新幹線が到着したのか次々とお客さんが乗り込んでくる。自分の隣にも40か50代くらいの男性が座られた。
発車するとこの男性、B5サイズのノートを取り出した。見ると鉛筆で絵を描いているようで、家々や工場なんかがびっしり詰まった町並みが見開きに広がっている。
私にはこういう創作系の才能も我慢強さもないので、感心する。恐らく趣味のものだと思うが、あまり見ると気が散るだろうと思ったので最低限の3チラくらいに抑えた。むろん、話しかけることはない。
次駅の敦賀で何人か降り、男性は他の座席に移動されたので平和堂で仕入れたビールを開けた。
いやぁいいです。
流れる風景を眺めながらのお酒が美味しい。私はこの行為の素晴らしさを学生時代の就職活動で知った。就活自体は嫌で仕方がなかったが、電車と酒のおかげでなんとか乗り切れたと思う。
今考えるとやばい就活生だったなぁ。もちろん往路では飲んでなかったですよ。
ところで、地元が平野でないせいか、こういう平野の景色をみると問答無用で「北海道みたい」と思う。北陸にも北海道にも失礼だと思うが、どこの出身地の人でもこういう感覚ってあるんじゃないかな。
13:48に金沢着。長くもないしあっという間でもないちょうどいい乗車時間。
相変わらず派手な外装の駅だ。ちょっと自己主張がすぎる気がしないでもないが、これが金沢なのだと自分を納得させる。
金沢に来て特にこれという目的はないのだが、海鮮は食べたかったので近江町市場に10分ほどかけて歩いて向かう。気温はこの時期にしては寒いが浜松とそうたいして変わらない。
平日だが、それでも春休みシーズンのためか市場は大変賑わっている。実は、近江町市場と兼六園にはつい2ヶ月前に訪れている。友人との福井旅行で帰路につく前の寄り道で訪れたのだ。その時は海鮮丼を食べたので、今回は鮨にしようと決めていた。
以前から名前だけは知っていた「もりもり寿し」に行きたいと思っていたが、凄まじい行列。人通りの多い市場の中、一人で待ちたくない…。かといって、こういう場所で食べ物屋を探してうろつくとたいてい最上級のグダりになるのを知っている。
せっかくならもりもり寿しがいい。調べると、なんと金沢駅近くのビルにあるようだ。
…よし戻ろう。こういうフットワークの軽さがひとり旅の利点だ。寿司の甘美な立ち姿だけをイメージして歩き続ける。10分足らずで同じ道を引き返す情けなさなど、寿司の前では恐るるに足らずだ。
何という名前か忘れたが、どうやら駅横のショッピングモールの6Fにもりもり寿しはあるようだ。
エッチラホッチラとエスカレーターを上がる。正直、雰囲気もへったくれもないがどこの店舗も中身はそんなに変わらないだろう。ぶっちゃけ東京にも大阪にも支店あるし。
時間は15時前ということで待ち客は1組のみ。おひとりさまということで早々と店内に入れた。
ここはタッチパネル注文ということで、おひとりさまにとってはありがたいお店だ。
終始一言も発することなく人並みに食事ができる画期的システム。全国にこういった高級思考の回転寿司が増えることを願うばかりである。
鰤、のどぐろ、梅貝など北陸ならではの握りを一通りチョイス。どれもちゃんと美味しい。期待はずれのネタはひとつもない。
北陸ならではの梅貝はうま煮も注文。冷たいけどちょうどいい味付け。肝はサザエと違ってなんだかツブツブしている。サザエより苦味も少なく食べやすいけど、フォークでひねり出すのに一苦労。
ちなみに、もちろん日本酒飲んでます。銘柄はレシートに書いてないのでうろ覚えだが、たしか加賀鳶と竹葉だったと思う。石川ってけっこう酒蔵多いんですね。
お会計は酒とかつまみ含めて15皿で7,365円…。
東京でこれだけ出せば、もっと高級な寿司が食えるのではと一瞬思ったがすぐ忘れることにした。
腹ごしらえしたところでホテルへ向かおう。
その2へ続きます。